意思決定支援の取り組むの変遷を理解するために下記の項目を理解することが重要である。
意思能力と意思決定能力
どちらも患者の自己決定に関わる重要な概念であるが、意思能力は法律的な枠組みであり、社会の安定(契約の安定)を図ることを目的に使われている一方、意思決定能力は支援現場において自己決定を尊重する事を目的に用いられている臨床的な概念である。
意思能力(competence) | 意思決定能力(Decision Making Capacity) | |
---|---|---|
性質 | 法的な制度 | 臨床的な概念 |
評価の主体 | 裁判所や制度的に判断 | 支援者 |
判断する事象 | 包括的 | 行為ごと |
変動 | 原則としてしない | 状況に応じて変動する |
評価方法 | カテゴリー(有無) | 関連する機能で評価をするため連続的 |
目的 | 権利能力の判断(契約の安定化) | 適切な同意を得る(自己決定の尊重) |
医療における意思決定能力を理解する
医療においては、本人の身体や生命に関わる内容に関する意思決定が求められるため、日常生活・社会生活における意思決定と重視する内容が異なる。日常生活・社会生活における意思決定能力では、思考過程や結果が合理的であることが重視される一方、医療における意思決定能力では、患者が与えられた情報を理解する能力を有しているかどうかもあわせて問われる。
参考文献
- 平成27年度 老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)認知症の行動・心理症状(BPSD)等に対し、認知症の人の意思決定能力や責任能力を踏まえた対応のあり方に関する調査研究事業報告書
医療における意思決定の特徴を理解する
意思決定能力は行為の内容により相対的に判断される(この点が一貫した判定となる意思能力と異なる)。医療における意思決定の場面は多岐にわたり、選択の結果が軽微なものから、本人の死を帰結する可能性のある重大なものまである。ただ、財産をめぐる判断・行為のように、損得が第三者から明確である場合とは異なり、合理的・客観的な判断が困難な場合がある。そのため、より本人の意思が尊重される。
意思決定能力は、あるかないかの二者択一的ではなく、段階的・漸次的なものである。
意思決定能力を規定するものは、認知症の状態だけではなく、環境的な面や医学的な面、神経学的な状態によっても変化する。そのため、意思決定能力の判断には幅があることを理解すべきである。
参考文献
- 平成27年度 老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)認知症の行動・心理症状(BPSD)等に対し、認知症の人の意思決定能力や責任能力を踏まえた対応のあり方に関する調査研究事業報告書