更新日付:2025年4月30日

【老年科】

A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia.

帯状疱疹ワクチンにより認知症発症リスクが軽減されるかもしれないという論文がNature に掲載されました。

7年間の追跡期間において、帯状疱疹ワクチンを接種していない人に比べて接種した人は、新規認知症発症率を3.5%減少(20%の相対的リスク減少)というデータです。
単なるコホート研究ではなく、帯状疱疹ワクチンの定期接種「前」と「後」の集団を比較しているため、時代以外の背景因子が同様であるというのが特徴です(回帰不連続デザイン)。
このデザインを使用することにより、擬似ランダム化比較試験になっており、よくあるコホート研究よりは説得力があるデータのようです。
とはいえ、生物学的な検討はこれからなので、なぜ帯状疱疹ワクチンによって認知症発症率が低下するのかは今後の課題です。

雑誌名:Nature(2025)
PMID: 40175543
DOI: 10.1038/s41586-025-08800-x

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【肺がん】

First-Line Pembrolizumab Efficacy in Octogenarians With NSCLCs Expressing ≥ 50% PD-L1 (ESCKEYP GFPC 05-2018)

80才以上かつPD-L1≧50%のNSCLC患者に対するペムブロリズマブ単剤の効果を評価したフランスの多施設後向き研究です。
よくある、「高齢者にはIO単剤でOK」という結果とは異なり、若年集団と比較して高齢集団はOSは短く(23.9か月 vs. 12.0か月)、PFSも短い(8.3か月 vs. 5.0か月)という結果でした。
一方、奏効割合は49% vs. 42%と大きな差はありませんでした。
この理由として、高齢集団では、腺癌と喫煙者が少なかったことが原因ではないかと考察されています。
有害事象や増悪「以外」でペムブロリズマブを中止した患者の割合は、若年集団で13.4%、高齢集団で23.2%と高齢者集団で高い傾向がありました。
ここから、高齢集団の予後を延ばすには、肺癌以外の疾患もケアする必要があると考えます。

もちろん後向き研究なので限界はありますが、高齢者だから放射線治療、という脊髄反射を見直すきっかけになるデータかと思います。

雑誌名:Clin Lung Cancer. 2025 Mar 4:S1525-7304(25)00047-6..
PMID: 40122771
DOI: 10.1016/j.cllc.2025.03.001

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