論文タイトル:
Effectiveness of comprehensive geriatric assessment with extensive patient coaching for improving quality of life in older patients with solid tumours receiving systemic therapy (G-oncoCOACH): a multicentre randomised controlled trial (2025年9月)
高齢がん患者に対して、「高齢者機能評価(GA)を実施するだけでは不十分」であることを示した多施設ランダム化比較試験です。
本試験の対象は、ベルギーの2施設における70歳以上の固形がん患者。
標準治療群は、老年科チームがGAを実施し、そこから導かれた介入推奨を腫瘍内科チームに電子カルテを通じて共有する診療(通常診療に準じた体制)。試験治療群では、老年科チームがGAに基づく推奨を実際に実施し、さらに患者コーチングを組み合わせた診療。
主要アウトカムは、EORTC QLQ-C30によるGlobal Health Status(GHS)の6か月後の変化。
試験群ではGHSが+3.0ポイント改善、対照群では−7.9ポイント低下し、群間差は+10.9ポイント(95% CI: 3.7–18.0、p=0.003)と、臨床的にも統計学的にも有意なQOLの改善が認められた。GA推奨の実施率も試験群で高かった(65% vs 45%)。12か月時点では両群のQOLは近似しており、介入効果は主に治療初期に集中していたと考えられた。
本試験の意義は、すでに「GAを行い、かつ推奨まで提示される」という高水準の標準診療が整った環境下においても、GAに基づく推奨を
“実際に行動に移すこと”と、患者の積極的な参加を支援することの重要性を明らかにした点にあります。とりわけ、本研究が実施された
ベルギーは、老年腫瘍学において欧州でも先進的な実装を進めている国であり、すでにGAが診療に組み込まれている実臨床の現場においても、
なお改善の余地があることを示した点は示唆に富みます。GAの導入すら進んでいない国や地域が多い中で、“評価のその先”へと進むべき段階に
あることを本試験は明確に示しています。
雑誌名:Lancet Healthy Longevity
PubMed:https://pubmed-ncbi-nlm-nih-gov.kyorin.idm.oclc.org/40818480/
PMID: 40818480
DOI: 10.1016/j.lanhl.2025.100743
論文タイトル:
Perioperative treatments for and postoperative activity of daily living of patients with early-stage breast cancer according to age group: A retrospective observational study
CGAに基づく介入の有用性を検証したデンマークで行われたRCTがJournal of Geriatric Oncologyに掲載されました。
雑誌名:Eur J Surg Oncol. 2024 Feb;50(2):107323.
PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38113554/
PMID:38113554
DOI:10.1016/j.ejso.2023.107323
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論文タイトル:
Survival in Older Japanese Adults With Advanced Cancer Before and After Implementation of a Geriatric Oncology Service
九州がんセンターの西嶋先生の論文がJCO-OPに掲載されました。
ヒストリカルコントロールとの比較ではありますが、高齢者総合的機能評価+老年科医による介入で生存期間が延長する可能性があるという世界初の論文です。
雑誌名:JCO Oncol Pract. 2023 Dec;19(12):1125-1132.
PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37200607/
PMID:37200607
DOI:10.1200/OP.22.00842
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